日本のステーブルコイン規制は、2022年のTerra/UST崩壊を契機に整備が進み、2026年の改正施行で円建てステーブルコインの社会実装段階に入った。ここでは経緯のポイントを整理する(各出来事の日付・出典は時系列、事象どうしのつながりは因果関係グラフを参照)。
なぜ規制が始まったか
2022年5月のTerra/UST崩壊で、裏付けの弱いステーブルコインが連鎖的に暴落するリスクが世界的に表面化した。日本はこれを受け、同年6月に改正資金決済法を成立させ、ステーブルコインを「電子決済手段」と法的に定義。発行者を銀行・資金移動業者・信託会社に限定し、流通を担う仲介者を登録制とする枠組みを各国に先駆けて整えた(2023年6月施行)。利用者保護を前提に「発行」と「流通」を分離したのが特徴だ。
制度の骨格
- 発行体の限定 — 銀行/資金移動業者/信託会社のみが発行できる
- 流通の登録制 — 流通は「電子決済手段等取引業」の登録が必要
- 自主規制の整備 — 2024年10月、JVCEAが認定資金決済事業者協会となり登録・監督体制が稼働
事業者の動き
発行基盤では三菱UFJ信託の「Progmat」が先行し、8社による合弁設立やクロスチェーン送金基盤「Project Pax」など準備が進んだ。流通面ではSBI VCトレードが国内初の電子決済手段等取引業者としてUSDCの取扱いを開始(2025年3月)。発行面ではJPYC社が資金移動業者として登録され、日本初の円建てステーブルコイン「JPYC」を発行(2025年8〜10月)。さらに3メガバンクがProgmat基盤での共同発行を検討、ソニー銀行は子会社を通じ米国免許を申請するなど、銀行・金融グループの参入が本格化した。
令和7年(2026年)改正のポイント
2026年6月1日施行の改正で、次の3点が導入された。
- 媒介に特化した「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の新設
- 信託型ステーブルコインの裏付け資産運用の柔軟化(一定割合まで短期国債・定期預金等を許容)
- 外国の信託型ステーブルコインを電子決済手段として認定する枠組み
海外発行ステーブルコインの国内取扱いルールも整備され、利用の選択肢が広がった。
論点と今後
制度が出そろい、円建てステーブルコインの社会実装(小売決済・国際送金・RWA/デジタル証券のDvP決済)が加速している。一方で、裏付け資産の運用範囲をどこまで広げるか、海外発行ステーブルコインの受け入れ条件、トラベルルール等のAML/CFT対応といった論点が残る。普及の試金石となるのは、JPYC・JPYSC(SBI×スターテイル)など円建てステーブルコインの発行残高と、決済・送金での実利用がどこまで伸びるかだ。