USDT(テザー)は暗号資産の取引をしていると必ず目にする銘柄です。「USDTとは何なのか」「USDTに将来性はあるのか」「USDTの危険性やリスクは何か」——暗号資産の初心者にとって疑問は尽きないでしょう。
USDTは米ドルと1:1で連動するステーブルコインで、暗号資産市場の基軸通貨として世界最大の時価総額を誇ります。本記事ではUSDTの仕組み・特徴・メリット・危険性から、購入方法・日本円への換金方法まで、2026年3月の最新データをもとにわかりやすく解説します。
USDT(テザー)とは?米ドル連動のステーブルコイン
USDTはTether Limited社が発行する米ドルと1:1で連動するステーブルコインで、暗号資産全体の時価総額ランキング第3位に位置しています。USDTの基本情報
USDTの概要を表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Tether(テザー) |
| ティッカー | USDT |
| 発行元 | Tether Limited(英領バージン諸島登録、2025年にエルサルバドルへ本社移転発表) |
| 発行開始 | 2014年(当初は「Realcoin」の名称) |
| 時価総額 | 約1,836億ドル(約28兆円)※2026年2月時点 |
| 時価総額ランキング | 暗号資産全体で第3位 |
| ステーブルコイン市場シェア | 約60% |
| グローバルユーザー数 | 5.3億人以上 |
| 発行上限 | なし(需要に応じてTether社が発行・償還を調整) |
USDTのグローバルユーザー数は5.3億人を超えており、暗号資産の世界で最も多く利用されるステーブルコインです。2025年のステーブルコイン市場全体の取引量は33兆ドル(前年比+72%)に達しており、USDTはその中心的な役割を果たしています。
USDTが属するステーブルコインの種類と仕組み
ステーブルコインとは、法定通貨や資産を裏付けにして価格の安定を目指す暗号資産の総称です。ビットコインやイーサリアムのようなボラティリティ(価格変動)が大きい暗号資産とは異なり、ステーブルコインは常に一定の価値を維持するよう設計されています。
ステーブルコインは主に3つのタイプに分けられます。
- 法定通貨担保型: 米ドルなどの法定通貨を裏付け資産として発行(USDT、USDCなど)
- 暗号資産担保型: 暗号資産を担保に発行(DAIなど)
- アルゴリズム型: スマートコントラクトで需給を調整し価格を維持(旧UST/Terraなど)
3つのタイプの中では、法定通貨担保型が比較的リスクが低く安定的とされます。暗号資産担保型は担保となる暗号資産のボラティリティの影響を受けやすく、アルゴリズム型は2022年のTerra/LUNA崩壊のように設計上の欠陥が致命的な崩壊につながったリスク事例があります。ただし法定通貨担保型も、発行体の信用や準備資産の健全性に依存するリスクは残ります。
USDTは法定通貨担保型に分類されます。Tether社が米国債や現金同等物などの準備資産(リザーブ)を保有し、発行済みのUSDTと同等以上の資産価値を維持することで、1USDT=1ドルのペッグ(連動)を実現しています。
USDTが米ドルとの1:1ペッグを維持する仕組み
USDTが米ドルとの1:1の価格を維持する仕組みは、裁定取引(アービトラージ)の原理に基づいています。
USDTの価格が1ドルを下回ると、トレーダーはUSDTを割安で購入してTether社に1ドルで償還を請求し、差額を利益として得ます。逆にUSDTの価格が1ドルを上回ると、Tether社に1ドルを預けて新しいUSDTを発行し、市場で売却して利益を得ます。USDTはTether社による発行・償還メカニズムと市場の裁定取引によって、米ドルとの1:1ペッグを維持しています。
Tether社は2025年第4四半期末時点で総資産1,928.8億ドル、総負債(発行済みUSDT)1,864.5億ドルと、約63億ドルの超過準備金を保有しています。準備資産のカバレッジ率は「総資産 ÷ 発行済みUSDT」で算出され、1,928.8億ドル ÷ 1,864.5億ドル = 約103.4% となります。
つまり発行済みUSDTに対して約3.4%の超過準備を確保しています。準備資産の大半は米国財務省証券(米国債)で構成されており、Tether社の米国債保有額は世界第17位に相当する1,416億ドルに達しています。
USDTの5つの特徴
USDTの特徴は、米ドルとの価格連動・複数チェーン対応・世界最大の時価総額・海外取引所での基軸通貨としての地位・DeFi活用の5つです。米ドルと連動し価格が安定している
USDTの最大の特徴は価格安定性です。ビットコインやイーサリアムが1日で10%以上変動することも珍しくない暗号資産市場において、USDTは常に1ドル前後を維持するよう設計されています。USDTは暗号資産のボラティリティを回避するための「避難先」として、トレーダーや投資家に広く利用されています。
複数のブロックチェーンに対応(ERC-20/TRC-20/TON)
USDTはEthereum、TRON、Solana、Polygon、Avalanche、TON、Bitcoin Lightning Networkなど、18チェーン以上のブロックチェーンに対応しています。特にTRON(TRC-20)上のUSDTが全体の過半数を占めており、ユーザー数6,800万人・累計27億件の送金実績があります。
2024年〜2025年にかけても対応チェーンの見直しが進んでいます。
- 2024年4月: TON(The Open Network)でUSDT稼働開始。Telegramエコシステムでの実需が拡大
- 2025年1月: Bitcoin Lightning NetworkでUSDT利用開始(Taproot Assetsプロトコル経由)
- 2025年7月: Omni・BCH-SLP・Kusama・EOS・Algorandの5チェーンでサポート終了
TON対応はTelegramの9億人以上のユーザーベースへのアクセスを可能にし、Lightning Network対応はビットコインの決済インフラとの統合を実現しました。一方でユーザーの少ないレガシーチェーンは整理し、セキュリティと開発リソースを集中させています。USDTは需要の高いチェーンへの対応を拡大しつつ、利用の少ないレガシーチェーンを整理する戦略をとっています。
ステーブルコインの中で時価総額・取引量ともに世界最大
USDTの時価総額は約1,836億ドル(2026年2月時点)で、2位のUSDC(約753億ドル)の2倍以上の規模です。USDTとUSDCの2銘柄だけでステーブルコイン市場全体の約93%を占めています。
USDTの24時間取引量は約738億ドルに達しており、ビットコインの取引量を上回ることも珍しくありません。2024年3月には発行残高が1,000億ドルを突破し、2019年末の約40億ドルから5年で25倍以上に成長しました。
海外取引所で基軸通貨として幅広く使われている
海外の暗号資産取引所では、BTC/USDT・ETH/USDT・SOL/USDTのように、USDTを基軸通貨とした取引ペアが標準的に用意されています。多くの海外取引所でUSDTペアが利用でき、暗号資産市場の基軸通貨の一つとしての地位を確立しています。
DeFi(分散型金融)で活用できる
USDTはDeFi(分散型金融)でも広く使われています。分散型取引所(DEX)での流動性提供や、レンディング・イールドファーミングといった運用の基軸トークンとしてUSDTが利用されています。価格が安定したステーブルコインを使うことで価格変動の影響は抑えられますが、DeFiの運用には元本割れ・スマートコントラクトの不具合・流動性の枯渇といったリスクが伴う点には注意が必要です。
USDTのメリット|保有・活用する利点
USDTのメリットは、価格の安定性を活かして暗号資産のボラティリティを回避でき、DeFi運用や低コストな国際送金にも使える点です。USDTは価格変動リスクを回避できる「避難先」
暗号資産市場が急落した際、ビットコインやイーサリアムなどのポジションをUSDTに一時退避させることで、ボラティリティ(価格変動リスク)を回避できます。法定通貨に戻す必要がなく、取引所内でUSDTに交換するだけで済むため、素早くリスクヘッジができます。
相場が不安定なときにUSDTへ一時退避するのは、暗号資産でよく使われるリスクヘッジ手法の一つです。相場が回復した際にUSDTから再び暗号資産に戻すこともできます。
海外市場ではUSDT建てペアが主流
グローバルの暗号資産市場では、アルトコインの取引ペアとしてUSDT建てが種類・流動性ともに多いのが一般的です。これはUSDTが基軸通貨として広く使われている結果で、世界の暗号資産取引の構造を理解するうえでの背景知識になります。
USDTによる国際送金が低コスト・高速
USDTを使った国際送金は、銀行を介した海外送金と比較して低コストかつ高速とされます。TRC-20(TRON)など低コストのネットワークを使えば送金手数料を抑えやすく、着金も数秒〜数分程度です(手数料・速度はネットワークの混雑状況により変動します)。
スイスのルガーノ市では、市税や一部の公共サービス・加盟店の支払い手段としてUSDTが受け入れられています。新興国を中心に、銀行口座を持たない人々がUSDTを通じて米ドル建ての価値を保管・送金する手段として使う動きも広がっています。
日本国内ではUSDTを直接購入できないため、国内取引所でETHを購入し、自分のウォレットからUniswapなどのDEXでUSDTにスワップして入手します(詳しい手順は後述します)。
USDTの危険性・リスク|知っておくべき注意点
USDTの危険性は、Tether社への信用依存(カウンターパーティーリスク)・デペッグリスク・各国の規制強化リスクの3つが中心です。カウンターパーティーリスク(Tether社への依存)
USDTの最大のリスクはカウンターパーティーリスク、つまりTether社という単一の企業に依存している点です。USDTの発行・償還・アドレス凍結の権限は全てTether社が保有しています。
Tether社のリスクに関する主な懸念点は以下のとおりです。
- 準備資産の透明性: BDO(会計事務所)による四半期アテステーション(証明手続き)は実施されているが、フル監査(完全な監査)ではない
- 過去の法的問題: 2019年にNY州司法長官から準備資産に関する虚偽説明の疑いで調査を受け、2021年に和解金を支払って解決
- アドレス凍結権限: 司法当局の要請に基づき、不正取得資金やハッキング関連のアドレスを凍結した実績がある
準備資産のアテステーションは財務諸表の完全な監査ではなく、特定の時点における残高の確認にとどまります。過去の法的問題は2021年の和解で解決済みですが、アドレス凍結権限の行使は中央集権性の高さを示しており、分散型金融の理念と相反する側面があります。Tether社は四半期ごとに準備資産の証明レポートを公開していますが、外部の独立した監査法人によるフル監査は実施されていない点が批判の対象となっています。ただし、2025年通年の純利益が100億ドル超、超過準備金が63億ドルという財務状況は、経営基盤の安定性を示しています。
デペッグ(価格乖離)のリスクと過去の事例
USDTは過去に複数回のデペッグ(1ドルからの価格乖離)を経験しています。代表的な2つの事例を紹介します。
2022年5月 Terra(UST)崩壊時のデペッグ| 項目 | データ |
|---|---|
| 加重平均最安値 | 0.9485ドル(約5.2%のデペッグ) |
| Kraken最安値 | 0.92ドル |
| 回復期間 | 約2ヶ月 |
| 償還処理量 | 1週間で130億ドル超 |
| 項目 | データ |
|---|---|
| Kraken最安値 | 0.93ドル(瞬間的) |
| 主要取引所 | 0.97〜0.98ドル |
| 償還処理量 | 24時間以内に7億USDT超 |
デペッグ率は「1ドルからの乖離幅(市場価格と1.00ドルの差の絶対値)÷ 1.00 × 100」で算出されます。
例えばTerra崩壊時の加重平均最安値0.9485ドルの場合、デペッグ率は約5.2%です。
USDTは過去のデペッグ事例で一時的に5%以上の価格乖離を記録しましたが、いずれも数日〜数ヶ月で1ドルに回復しています。Tether社が大規模な償還処理を滞りなく実行できた実績は、準備資産の流動性の高さを示すものでもあります。ただし、Tether社の経営に重大な問題が発生した場合にデペッグが長期化するリスクは否定できません。
各国の規制強化の可能性(MiCA・日本の資金決済法)
USDTに対する規制リスクは世界各地で高まっています。
EU(MiCA規制): 2024年12月に完全施行されたMiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)により、TetherはEU域内での認可ライセンスを取得していないため実質的に排除されています。Coinbase Europe(2024年12月)、Binance(2025年3月)、Kraken(2025年3月)がEEA向けのUSDT取扱を順次停止しました。
米国(GENIUS Act): 2025年7月に成立したGENIUS Actは、ステーブルコイン発行体に100%の裏付け資産と月次の準備金開示を義務付けています。USDTは一部の要件を満たさない可能性があり、Tether社は米国市場向けに新たなステーブルコイン「USA₮」の発行を準備しています。
日本(改正資金決済法): 2025年6月に成立した改正資金決済法は2026年に施行予定で、ステーブルコインの発行主体を銀行・登録資金移動業者・信託会社に限定しています。日本の改正資金決済法により、Tether社のような海外発行ステーブルコインが国内で流通するためには追加の法的要件を満たす必要があります。
送金時のネットワーク選択ミスによる資産喪失
USDTは複数のブロックチェーンに対応していますが、送金時に誤ったネットワークを選択すると資産を失う可能性があります。例えば、ERC-20で送金したUSDTをTRC-20のアドレスで受け取ろうとしても、ネットワークが異なるため資産が到達しません。USDTの送金時は、送金先の取引所やウォレットが対応するネットワークを必ず事前に確認してから送金してください。
USDTとUSDCの違い|どちらを選ぶべき?
流動性と取引ペアの豊富さを重視するならUSDT、透明性と規制対応を重視するならUSDCが適しています。発行体と監査体制の違い
| 項目 | USDT | USDC |
|---|---|---|
| 発行体 | Tether Limited(英領バージン諸島) | Circle(米国企業) |
| 監査体制 | BDOによる四半期アテステーション | Deloitteによる月次監査 |
| 準備資産構成 | 米国債約80%、逆レポ12%、金5%、BTC等 | 米国債+現金(シンプルな構成) |
| MiCA対応 | 非準拠(EU市場から実質排除) | 完全準拠(欧州での法的地位確立) |
USDCを発行するCircle社は米国企業としてSECやFinCENの規制下にあり、Deloitteによる月次の独立監査を受けています。一方、Tether社の四半期アテステーションは監査に比べて検証範囲が限定的です。監査体制と規制対応の面ではUSDCの方が透明性が高く、機関投資家からの信頼が厚い傾向があります。
USDCについては個別ページで詳しく解説しています。
時価総額・流動性・対応チェーンの比較
| 項目 | USDT | USDC |
|---|---|---|
| 時価総額(2026年2月) | 約1,836億ドル | 約753億ドル |
| 市場シェア | 約60% | 約34% |
| 2025年成長率 | +36% | +73% |
| 対応チェーン数 | 18チェーン以上 | 15チェーン以上 |
| 主な強み | 流動性が大きく対応取引所が多い | 機関投資家に支持・規制対応を重視 |
時価総額ではUSDTが大きく上回りますが、2025年の成長率ではUSDC(+73%)がUSDT(+36%)を上回っています。EU市場でのUSDT排除やGENIUS Act対応を背景に、USDCのシェアが急速に拡大している点は注目すべき動向です。
規制対応の違い(MiCA準拠など)
MiCA施行後のEU市場ではUSDCが唯一の主要ステーブルコインとして利用可能な状態です。米国でもGENIUS Act準拠の観点からUSDCが有利な立場にあります。Tether社は米国市場向けに規制準拠の新ステーブルコイン「USA₮」を準備していますが、USDTそのものの規制対応は依然として課題を抱えています。
用途に応じた使い分けが考えられます。流動性やペアの多さを重視する場面ではUSDT、規制対応・透明性を重視するならUSDCというように、それぞれの強みが異なります。
USDTの将来性と今後の見通し【2026年】
ステーブルコイン市場全体の拡大と規制整備により、USDTの需要は今後も増加する見込みですが、規制リスクとUSDCの追い上げには注意が必要です。ステーブルコイン市場の成長トレンド
ステーブルコイン市場は急速な成長を続けています。2020年の280億ドルから2025年には2,820億ドルまで拡大し、5年間で約10倍に成長しました。2025年の年間取引量は33兆ドル(前年比+72%)を記録しています。
業界アナリストの予測では、ステーブルコイン市場の時価総額は2026年末までに1兆ドルを超える可能性が指摘されています。ステーブルコイン市場全体の成長が続く限り、市場シェア約60%を持つUSDTも引き続き恩恵を受ける見通しです。
Tether社の準備資産の透明性向上と四半期報告
Tether社は準備資産の透明性向上に注力しています。2025年第4四半期のレポートでは以下の数値が報告されています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総資産 | 1,928.8億ドル |
| 総負債(発行済みUSDT) | 1,864.5億ドル |
| 超過準備金 | 63億ドル |
| 米国債保有額 | 1,416億ドル(世界第17位) |
| ゴールド保有額 | 170億ドル(127.5トン) |
| ビットコイン保有量 | 約80億ドル(96,184 BTC) |
| 年間純利益(2025年通年) | 100億ドル超 |
Tether社の2025年通年の純利益は100億ドルを超えており、準備資産も発行残高を大幅に上回る水準を維持しています。財務の安定性は改善傾向にありますが、BDOによるアテステーションからフル監査への移行が実現するかどうかが、今後の信頼性向上のカギとなります。
USDTの日本国内での取扱状況の変化
2026年3月時点で、金融庁に登録された国内暗号資産取引所でUSDTを取り扱う業者は存在しません。SBI VCトレードが2025年3月にステーブルコインとして国内初の取扱を開始しましたが、取り扱っているのはUSDC(USDコイン)であり、USDTではありません。
改正資金決済法(2026年施行予定)により、外国発行のステーブルコインが日本国内で流通するためには追加の法的要件を満たす必要があります。日本国内でUSDTが直接購入できるようになる時期は現時点では未定で、当面は国内取引所で購入した暗号資産をDEXでスワップする形での入手が続く見通しです。
USA₮構想と米国市場への展開
Tether社は米国市場向けの新しいステーブルコイン「USA₮(USAT)」の発行を準備しています。USA₮はGENIUS Actの要件に完全準拠する設計で、元White House暗号資産委員会幹部のBo HinesがCEOに就任しています。2025年末〜2026年初頭にかけて発行が開始される予定です。
USDTとは別に米国規制準拠のUSA₮を発行することで、Tether社は規制リスクを分散しつつ世界最大のステーブルコイン発行体としての地位を維持する戦略です。ただし、直近2ヶ月で時価総額が32億ドル縮小(65億USDTがバーン)するなど、EU規制の影響が数字にも表れ始めています。USDCが同期間に+72%成長していることを考えると、USDTのシェアが今後も維持されるかどうかは予断を許しません。
USDTの買い方|DEXでスワップして入手する手順
USDTは2026年6月時点で日本国内の取引所では取り扱いがないため、国内取引所で購入したイーサリアム(ETH)を自分のウォレットに移し、Uniswapなどの分散型取引所(DEX)でETHからUSDTにスワップして入手します。DEXは取引所のような業者を介さず、ブロックチェーン上のスマートコントラクトでトークン同士を直接交換する仕組みです。流れは次の3ステップです。
- 国内の登録取引所でETHを購入する
- ETHを自分のウォレット(MetaMask等)へ送金する
- UniswapでETHをUSDTにスワップする
DEXとウォレットは「自分で秘密鍵を管理し、自分で操作する」自己責任の世界です。後述のガス代・偽トークン・スマートコントラクトのリスクを理解したうえで、まずは少額で試すことを推奨します。
ステップ1: 国内取引所でETHを購入する
国内の登録取引所でETHを購入します。スワップ後のUSDTを動かす際やスワップ自体に手数料(ガス代)としてETHが必要になるため、交換したい金額にガス代分の余裕を加えて購入しておきます。暗号資産の送金手数料が無料・低コストの取引所を選ぶと、ウォレットへの送金コストを抑えられます(手数料は変動するため利用前に公式で確認してください)。
ステップ2: 自分のウォレットへETHを送金する
MetaMaskなどの自己管理ウォレットを用意します。ウォレットは「シードフレーズ(リカバリーフレーズ)」で資産を管理し、これを失う・第三者に知られると資産を失います。シードフレーズは誰にも教えず、オフラインで安全に保管してください。
ウォレットの受取アドレスをコピーし、国内取引所からそのアドレス宛にETHを送金します。本ガイドはEthereumメインネットを前提に説明します(L2を使う場合は後述の注意点を参照)。送金時の注意点は次のとおりです。
- ネットワークを送金元・送金先で一致させる(Ethereumメインネット同士。不一致だと着金せず復元困難)
- アドレスは必ずコピー&ペースト(1文字違いでも資産喪失。目視入力は避ける)
- 初回は少額でテスト送金し、着金を確認してから本送金する
MetaMaskでは「アカウント名の下のアドレスをクリックしてコピー」「受信ネットワークを確認」という操作になります(ウォレットアプリの画面は各公式ドキュメントも参照してください)。
ステップ3: UniswapでETHをUSDTにスワップする
Uniswap(app.uniswap.org)にアクセスし、画面右上からウォレットを接続します。「売却」にETH、「購入」側でトークンを選択します。

トークン選択画面で「USDT」を選びます。ここが最重要の注意点です。 USDTは複数のチェーンに存在し、ブリッジ版や名前を似せた偽トークンがリストに並ぶことがあります(下の例ではBNB由来のブリッジ版USDTや無関係なトークンも表示されています)。発行体がTetherの正規USDTか、後述のコントラクトアドレスとチェーンを必ず確認してから選んでください。

USDTを選ぶと、ETH→USDTのスワップ画面になります。交換したいETHの数量を入力し、レートとスリッページ(許容できる価格のズレ。歯車アイコンから設定)を確認して「スワップ」を実行し、ウォレット側で内容を確認して署名すると交換が完了します。

ウォレット側に表示される署名・承認画面(MetaMaskのポップアップ)では、署名する前に「受け取るトークン(USDTの正規コントラクト)・数量・ネットワーク・承認するコントラクト」が意図どおりかを必ず確認してください。身に覚えのない承認要求や、想定と違うトークン・無制限のトークン使用許可(approve)には署名しないでください。
DEXスワップで注意するリスク
DEXでのスワップには、取引所での売買とは異なるリスクがあります。
- 価格影響・スリッページ: 流動性が薄いと想定より不利なレートになることがある。スリッページ上限と「最低受取数量」を確認する
- ガス代は失敗時も発生し得る: トランザクションが失敗(リバート)してもガス代が戻らない場合がある
- 偽トークン・誤コントラクト: 名前を似せた偽USDTや別チェーンのトークンを掴むリスク。正規コントラクトを必ず確認する
- 悪意ある署名・承認権限: フィッシングサイトや不正なコントラクトへの署名で資産を抜かれる事例がある。接続先URLと署名内容を確認する
- 自己管理リスク: ウォレットの鍵やシードフレーズを失う・漏らすと資産を失う
Uniswapは誰でもトークンを作成・上場できる仕組み(パーミッションレス)のため、トークンリストに載っていること自体は正規性を保証しません。最終的にコントラクトアドレスを利用者自身で確認する必要があります。
ガス代はネットワークで大きく変わる
DEXのスワップやトークン送金には、そのチェーンの手数料(ガス代)がかかります。Ethereumメインネットは混雑時にガス代が高騰しやすく、少額のスワップでも割高になることがあります。Arbitrum・Optimism・Polygon・BaseなどのL2(レイヤー2)はガス代を抑えやすい選択肢ですが、チェーンごとにUSDTのコントラクトは別物で、ネイティブ版とブリッジ版(USDT.e等)が混在し、国内取引所の入出金対応も異なります。 L2を使う場合は、そのチェーンの正規USDTの有無・コントラクトアドレス・自分が使う取引所/ウォレットの対応を個別に公式情報で確認してください。確認が難しい場合は、情報が揃っているEthereumメインネットで行うのが無難です。
USDTの正規コントラクトアドレス(主要チェーン)
偽トークンや別チェーンの取り違えを避けるため、正規のコントラクトアドレスを確認します。以下はTether公式・CoinGeckoで確認した主要チェーンの正規アドレスです(2026年6月時点)。他チェーンのアドレスや最新情報は、必ずTether公式サイトや各チェーンの公式ブロックエクスプローラで確認してください。
| チェーン | 規格 | 正規コントラクトアドレス |
|---|---|---|
| Ethereum | ERC-20 | 0xdAC17F958D2ee523a2206206994597C13D831ec7 |
| Tron | TRC-20 | TR7NHqjeKQxGTCi8q8ZY4pL8otSzgjLj6t |
| Avalanche C-Chain | ERC-20 | 0x9702230A8Ea53601f5cD2dc00fDBc13d4dF4A8c7 |
| Solana | SPL | Es9vMFrzaCERmJfrF4H2FYD4KCoNkY11McCe8BenwNYB |
Polygon・Arbitrum・Optimism・BNB Smart Chainなどにも流通しますが、Tetherネイティブ発行版とブリッジ版が混在する場合があるため上表には含めていません。これらのチェーンを使う場合は、まずTether公式でそのチェーンのネイティブ発行の有無を確認し、ネイティブが無くブリッジ版を使うときは発行元・コントラクトアドレス・償還条件、および自分が使う取引所/ウォレットの対応状況まで確認してください(トークンリストへの掲載自体は正規性を保証しません)。
USDTを日本円に換金する方法
USDTを日本円に換金するときは、買い方の逆順になります。①UniswapなどのDEXでUSDTをETHにスワップ → ②ETHを国内取引所へ送金 → ③国内取引所でETHを売却して日本円を出金、の3ステップです。
USDTを日本円に換金する3ステップ
- DEXでUSDTをETHにスワップ: Uniswapでウォレットを接続し、USDT→ETHにスワップしてウォレット側で署名します
- ETHを国内取引所へ送金: 国内取引所のETH入金アドレスへ送金します(ネットワークを一致させ、初回は少額でテスト)
- 国内取引所でETHを売却→日本円を出金: ETHを日本円で売却し、銀行口座に出金します
USDT換金時の手数料と注意点
換金時には以下の手数料が発生します。
- DEXのスワップ手数料: USDT→ETHスワップ時(DEX・流動性により変動)
- ブロックチェーンのガス代: スワップとETH送金時(ネットワーク混雑状況による。L2なら低コスト)
- 国内取引所の取引手数料: ETH→日本円売却時(取引所による)
- 日本円出金手数料: 銀行口座への出金時(取引所による)
これらを合計した手数料負担は、DEX・取引所・時点・ネットワーク混雑状況により変動します(L2などの低コストネットワークを使えばガス代分は抑えられます)。売買手数料・日本円出金手数料が無料の国内取引所を選ぶと、換金時のコストを抑えやすくなります。各手数料は変動するため、利用前に公式の最新情報を確認してください。
USDTの税金・確定申告の注意点
税金面では、暗号資産(ETH等)をUSDTにスワップした時点で、その暗号資産に利益が出ていれば譲渡損益が生じ、原則として課税対象になり得ます。日本の税務では暗号資産同士の交換も損益が認識されるのが原則です(ステーブルコインの税務上の分類・取扱いは制度整備が進む途中のため、最新の取扱いは国税庁FAQや税理士で確認してください)。
例えば、1ETH=30万円のときに購入したETHを、1ETH=36万円に値上がりしたタイミングでUSDTにスワップした場合の課税対象額は以下のとおりです。
課税対象額は「交換時の時価 − 取得単価」で計算され、36万円 − 30万円 = 6万円 となります(1ETH分の場合)。
この利益が課税対象になり得ます。USDTを保有しているだけでは課税されませんが、暗号資産からUSDTへのスワップ時や、USDTから別の暗号資産への交換時に利益が出ていれば確定申告が必要になる場合があります。
給与所得者で給与以外の所得が他に無い場合、暗号資産などの年間利益(所得)が20万円を超えると所得税の確定申告が必要、というのが一般的な目安です(医療費控除等で確定申告をする場合は20万円以下でも申告が必要、など条件により異なります)。なお、この20万円基準は所得税の申告の話で、住民税は別途申告が必要な点に注意してください。暗号資産の利益は原則として雑所得・総合課税で、適用される税率は所得額により異なります。実際の要否・計算は、税理士や国税庁のFAQで必ず確認してください。
まとめ
USDT(テザー)は米ドルと1:1で連動する世界最大のステーブルコインで、暗号資産市場の基軸通貨として5.3億人以上のユーザーに利用されています。DeFi運用や国際送金など幅広い用途で使われる一方、Tether社への信用依存やデペッグリスク、各国の規制強化といった危険性も存在します。
2026年現在、日本国内の取引所ではUSDTを直接購入できないため、国内取引所でETH等を購入し、自分のウォレットからUniswapなどのDEXでスワップして入手する形になります。DEX・ウォレットの自己管理リスク、ネットワークごとのガス代とL2を使う場合のトークン・ブリッジの確認、偽トークン回避のためのコントラクト確認、USDCとの使い分けなど、USDTを安全に扱うためには正しい知識が欠かせません。
参考リンク
- Tether公式 — 四半期レポート — 準備資産・財務データの公式発表
- CoinGecko — Tether (USDT) — 時価総額・取引量のリアルタイムデータ
- CoinDesk — Circle's USDC Outpaces Growth of Tether's USDT — 2025年のステーブルコイン市場動向
- CoinDesk — Tether's Gold Holdings Top $17 Billion — Tether社の2025年財務実績
- CoinDesk — Tether Brings USDT to Bitcoin Lightning — Lightning Network対応
- Tether公式 — レガシーチェーン終了告知 — 5チェーンのサポート終了
- 金融庁 — 暗号資産交換業者登録一覧 — 国内登録業者の確認
- Business Lawyers — 改正資金決済法 — 日本のステーブルコイン規制
- 国税庁 — 仮想通貨に関する税務上の取扱いFAQ — 暗号資産の税務
- SBI VCトレード — USDC取扱開始 — 国内初のステーブルコイン取扱
- Vaultody — What MiCA Means for Tether — EU規制のUSDTへの影響