DAI(ダイ)とは
DAI は、Sky Protocol(旧 MakerDAO)のスマートコントラクトが発行する暗号資産担保型のステーブルコインです。2017年12月に Single-Collateral Dai(SAI)として始まり、2019年11月に複数の担保資産を受け入れる Multi-Collateral Dai へアップグレードされました。米ドルに 1:1 でソフトペッグされ、ETH などの暗号資産を過剰担保としてスマートコントラクトに預け入れることで発行されます。
中央発行者が存在しないのが最大の特徴で、担保資産・発行量・清算状況はすべてブロックチェーン上で公開・検証可能です。法定通貨担保型の USDT・USDC が「発行体への信頼」を前提とするのに対し、DAI は「コードへの信頼」を前提とします。
2024年8月、運営プロジェクトの MakerDAO は Sky Protocol にリブランドし、新ステーブルコイン USDS と新ガバナンストークン SKY が追加されました。DAI は廃止されておらず並行存続していますが、グローバルでも国内でも DAI → USDS への移行が進行している過渡期にあります。
価格推移と主要イベント
DAI は米ドルペッグなので価格自体は ±1% 程度の範囲で推移しますが、いくつかの局面でペッグが大きく外れた歴史があります。2020年3月の Black Thursday では ETH 急落で清算オークションが混乱し、4M DAI が無担保で発行される事態が発生しました。2023年3月には USDC ディペグの巻き添えで 0.882 ドルまで下落しています。
MakerDAO → Sky Protocol リブランドと USDS 移行
2024年8月、創設者 Rune Christensen が「Endgame」と呼ばれる長期再構築計画の一環として、MakerDAO を Sky Protocol にリブランドすることを発表しました。9月には実装が完了し、以下の関係が確立されています。
- DAI: 既存ステーブルコイン、引き続き存続
- USDS: 新ステーブルコイン、DAI と 1:1 で双方向にアップグレード可能
- MKR(旧ガバナンストークン): 引き続き存続
- SKY(新ガバナンストークン): MKR と 1:24,000 でアップグレード可能
USDS は DAI と同じ暗号資産担保型ステーブルコインですが、Sky Savings Rate (SSR) と呼ばれる利回り付与機能や、新しい担保資産ポートフォリオの導入を前提に設計されています。Sky Protocol は「DAI を強制廃止しない」方針を示していますが、新規発行・流動性の中心は USDS に移っていく方向です。
国内取引所の DAI 取扱動向(2026年5月時点)
2026年に入り、国内取引所で DAI 取扱を変更・終了する動きが急速に進行しています。
| 取引所 | 状況 | 詳細 |
|---|---|---|
| Binance Japan | 取扱一時終了(2026-04-07〜) | 国内取引所で最初の変更 |
| GMOコイン | 廃止予定(2026-06-06 サービス終了、7月初週強制売却) | 2026-04-30 公告。MakerDAO リブランド+ USDS 移行+流動性確保困難を理由に挙げる |
| SBI VCトレード | 買付停止(2026-06-03〜、売却継続) | 2026-05-01 公告。出庫対象外。USDS 取扱予定なしと明示 |
| bitFlyer | 取扱継続(売買のみ、送付・預入非対応) | 2024年2月取扱開始 |
| bitbank | 取扱継続(DAI/JPY 板取引対応) | SKY/JPY も上場済み |
| BitTrade | 取扱継続 | SKY/JPY は2025-10-29 取扱開始 |
| Coincheck | 取扱継続(取引所板取引 Maker/Taker 0%) | 2026年5月時点で廃止公告なし |
| OKJ / FINX JCrypto / OSL Japan | 取扱継続 | GMOコイン公告で言及(個別ニュース未確認) |
GMOコイン公告は「今後、各社の判断で変更される可能性がございます」と明言しており、今後さらに廃止公告が出る可能性があります。USDS を取り扱う国内取引所は2026年5月時点で確認されていません。
なお、海外では Binance が2026-04-09 に DAI→USDS 自動変換を完了、Coinbase は2026-05-04 に DAI 取引停止(未請求は USDS に1:1変換)、KuCoin・Crypto.com・MEXC も DAI→USDS スワップ対応を完了済みで、業界全体で USDS 移行が進行しています。
DAI の仕組み — 暗号資産担保型の原理
DAI は、Sky Protocol のスマートコントラクトに ETH などの暗号資産を過剰担保として預け入れることで発行されます。担保資産の市場価値が一定比率(清算比率)を下回ると、スマートコントラクトが自動的に清算オークションを実行し、担保を売却して DAI の価値を回収します。
代表的な担保資産は ETH ですが、Multi-Collateral Dai 移行(2019年11月)以降は WBTC・USDC・他のステーブルコインなど複数のアセットを担保として受け入れています。Sky Protocol のリスクパラメータ(清算比率・安定化手数料・DAI Savings Rate 等)は、ガバナンストークン保有者(MKR、現 SKY)の投票で決定されます。
DAI と DeFi の関わり
DAI は DeFi(分散型金融)のインフラ通貨として広く使われてきました。Aave・Compound などのレンディングプロトコル、Uniswap・Curve などの DEX、yearn.finance などのアグリゲーターで、価値の安定した取引ペア・担保資産として活用されています。
中央発行者を介さず、口座開設や本人確認なしで取引できるため、銀行口座を持たない地域での金融アクセスや、検閲耐性が求められる用途で支持されてきました。一方で、Sky Protocol のスマートコントラクト自体に重大な脆弱性が見つかれば DAI 全体の価値が失われるリスクや、担保資産(特に USDC など他のステーブルコイン)のディペグに巻き込まれるリスクは構造的に残ります。
DAI の留意点
- USDS への移行が進行中: 国内外で DAI 取扱を終了する取引所が相次いでいます。長期保有する場合は USDS への移行や、対応取引所への移管を検討する必要があります。
- ペッグは絶対ではない: 過去に Black Thursday や USDC 連鎖ディペグで 0.88〜0.92 ドル台まで下落した事例があります。法定通貨担保型より価格変動幅が大きい局面があります。
- 担保資産の構成変化: 2020年以降、DAI の担保構成に USDC など中央集権的ステーブルコインの比率が高まり、「分散型」の純度が議論されてきました。Sky Protocol への移行で、担保ポートフォリオの方針も変化する可能性があります。
- スマートコントラクト脆弱性リスク: 過去に深刻なエクスプロイト事例はないものの、構造的にコードへの信頼が前提となります。